AIR FILES - Engine Parameters SectionsOriginal text written by Jerry Beckwith
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パラメータ名 | 説明 |
Displacement (Per Cylinder) |
1気筒あたりの排気量 |
Compression Ratio |
圧縮比 |
Number Of Cylinders |
気筒数 |
Maximum RPM |
最大回転数 |
Unknown1 (HP?) |
不明なパラメーター |
Neg-G Carburetor Cut Out |
マイナスGで燃料供給が止まるかどうか |
Engine Type |
シリンダーの配置(星型=0、直列=1) |
Is Turbocharged |
過給器の有無 |
Max. Manifold Pressure |
最大吸気圧 |
Boost Gain |
過給器による加圧率 |
Critical Altitude |
過給器が機能を発揮する限界高度 |
WEP Type |
緊急出力のタイプ(なし=0、水メタノール噴射=1、メタノール噴射=2、緊急出力=3) |
WEP Manifold Pressure Change Rate |
緊急出力による吸気圧の変化率 |
WEP Manifold Pressure Boost |
緊急出力による吸気圧の加圧量 |
Fuel Injection |
燃料噴射式エンジン |
Auto Magneto Cutoff |
点火装置自動停止の有無 |
Manual Cutoff Available |
手動停止の可否(手動停止可=0、不可=1) |
CFSでは以上のようなパラメータを元にして、次のような手順で出力を計算しているようです。
このセクションには数値の組み合わせが2対設定されています。以下は CFS 標準の P51Dのデータです。
0 |
0.2 |
1 |
0.98 |
1番目のペアの0.2を1.0に変更するとスロットルは常にフルスロットル状態になります。2番目のペアの0.98を小さくするとフルスロットルになりません。
セクション 506 は CFS 標準機体のすべての機体でほぼ同じ設定となっています。このセクションに関しては、スロットルの効き具合以外に、飛行特性に大きな影響は及ぼさないようです。
このセクションはルックアップテーブル形式になっており、燃料消費率、混合気比率、トルク、出力に影響を及ぼします。CFS 標準の P51D のセクション 507 は次のような数値になっています。
0.054 | 0.0 |
0.067 | 1.0 |
0.124 | 0.0 |
その他のCFS標準機体も同じ設定になっているか、ごく近い値です。0.054、0.067、0.124の値を大きく変えてしまうとエンジンがスタートしなくなってしまいます。また、このセクションのフォーマットを変更してしまうと機体データを正常にロードできなくなってしまいます。以下に設定値をを変化させたときの、飛行特性の変化の実例を紹介します。
0.054 | 0.0 |
0.067 | 2.0 |
0.124 | 0.0 |
燃料の流入量が 2 倍になり、出力が 2 倍になりますが、エンジンの回転数と吸気圧は変わりませんので空気の流入量は変わりません。この結果、混合気比率はもとの設定の半分になります。元の混合気比率は14:1ですがこの変更により7:1になりました。
0.054 | 1.0 |
0.067 | 2.0 |
0.124 | 1.0 |
この場合、高度が上がるにつれて燃料の流入が増加しました。どうやらこのセクションは高度とキャブレターの混合気比率の校正を行っているようです。
このセクションには校正曲線らしきものが定義されており、燃料消費率、混合気比率、トルクおよび出力に影響を及ぼします。以下は CFS 標準の P51D の例です。
0 | 0.53 |
700 | 0.53 |
2000 | 0.56 |
2200 | 0.56 |
3000 | 0.56 |
ここではセクション 508 を変更したときに、飛行特性がどのように変化するかの実験を行った結果を示します。A/Fは混合気比率です。エンジンに負荷をかけて低回転時のデータを収集するためプロペラピッチは手動とし、その他の条件は以下のようにしました。
吸気圧 | 61psi |
スロットル | 100% |
混合気比率 | 100% |
高度 | 1000フィート |
実験はマニュアル操作で行われましたので、高度には±100フィート程度の誤差を含みます。また回転数が上がるにつれて、トルクは減少しますのでこれについては一定ではありません。回転数とトルクとの関係についてはセクション509を参照してください。
セクション 508 の設定 | ||||
3000 | 0.5 | |||
2200 | 0.5 | |||
2000 | 0.5 | |||
700 | 0.5 | |||
実験結果 | ||||
RPM | GPM | A/F | HP | Torque |
3000 | 3.01 | 13.38 | 2103 | 3682 |
2416 | 2.38 | 13.59 | 1723 | 3746 |
1987 | 2.08 | 12.82 | 1403 | 3779 |
1800 | 1.94 | 12.45 | 1303 | 3801 |
セクション 508 の設定 | ||||
3000 | 0.9 | |||
2200 | 0.9 | |||
2000 | 0.9 | |||
700 | 0.9 | |||
実験結果 | ||||
RPM | GPM | A/F | HP | Torque |
3000 | 5.62 | 7.12 | 3925 | 6879 |
2781 | 5.26 | 7.06 | 3664 | 6920 |
2500 | 4.82 | 6.92 | 3318 | 6973 |
2218 | 4.16 | 7.12 | 2951 | 6988 |
1958 | 3.78 | 6.9 | 2606 | 6996 |
セクション 508 の設定 | ||||
3000 | 0.9 | |||
2200 | 0.8 | |||
2000 | 0.77 | |||
700 | 0.5 | |||
実験結果 | ||||
RPM | GPM | A/F | HP | Torque |
3000 | 5.51 | 7.72 | 3946 | 6916 |
2700 | 491 | 7.4 | 3447 | 6685 |
2508 | 4.4 | 7.63 | 3093 | 6476 |
2207 | 3.79 | 7.81 | 2609 | 6209 |
200 | 3.27 | 8.23 | 2287 | 5984 |
1800 | 2.62 | 9.19 | 1940 | 5661 |
以上の結果より、トルクと回転数は、セクション 508 の設定値を係数として、正比例の関係にあることがわかります。セクション 508 の数値を増加すると、燃料の燃焼量が増加して、出力が増大します。
興味深いのは、このセクションの値を0.5に設定すると混合気比率はほぼ13:1で一定となり、0.9に設定した場合には7:1になる点です。どうやらセクション 508 はある回転数における最適な混合気比率を定義しているようです。通常はガソリン 1 ポンドあたり空気 13 ポンドの割合で燃焼していますが、このセクションの変更によってガソリン1ポンドあたり7ポンドで燃焼するようです。
燃焼される空気は、吸気圧、回転数および排気量に基づいた吸気の流入量に比例しているようですが、空気の温度は考慮されていないようです。このセクションはそれを補正するために存在していると思われます。
過給器で加圧された空気は断熱圧縮によって温度が上昇します。逆に、圧力が一定で温度が高くなれば、量は減ります。2次大戦中に活躍した戦闘機のほとんどは、過給器とエンジンの間にインタークーラーが設けられています。インタークーラーにより流入した空気は冷却され、密度が高くなり、結果として空気の流入量が増加します。この動作をシミュレートするためには、単位堆積あたりの空気流入量変化を校正するため、条件に応じたキャブレターの校正曲線が必要になります。セクション 508を "carburetor calibration" と呼んだのはそのためです。
まとめますと、このセクションは、回転数の関数として、燃料消費率とトルクを定義する校正曲線を定義するものです。これから設計しようとしているエンジンの気筒数や排気量によって、独特のトルク特性が必要な場合にはこのセクションを編集してやることで、望む出力特性を実現することができます。
このセクションには1気筒あたりのトルク損失が定義されています。トルク損失は回転数の関数として定義されていて、エンジンの摩擦をモデル化しています。校正曲線には負の回転数が定義されていて、これはおそらく、出力0の状態で逆回転しているエンジンをモデル化しているものと思われます。