AIR FILES - Engine Parameters Sections

Original text written by Jerry Beckwith
Translated and edited by Daikie

第1章 エンジンに関するセクション

Section500 FS98 Engine Parameters

このセクションにはFS98におけるエンジンのパラメータが記述されています。CFS用の*.airファイルにもこのセクションが必ず含まれていないといけませんが、下記の3つのパラメータ以外は機能を持ちません。

Gaverned RPM (調速器回転数)

この項目が 0 になっているとエンジンがかかりません。それ以外には飛行特性に影響がないようです。

Maximum horsepower (最大出力)

この項目が0になっているとエンジンがかかりません。この項目は CFS 機体のエンジン出力には影響せず、エンジン音に影響します。

Animate AI Prop

この項目が 0 になっているとAI機体のプロペラがアニメーションしません。

Maximum horsepower の項目はサウンドにのみ関連していて、飛行特性には影響を及ぼしません。CFS では FS98 よりも進化した方法を採用していて、セクション 505、506、507、508 および 509 の設定値から "リアルタイムに" エンジン出力を計算しているようです。その上で、上記のMaximum horsepowerの設定値と比率をとって、エンジンがどのくらい "力強く" 音を発生するかをコントロールしているようです。

お気づきでない方もいらっしゃるかもしれませんが、CFSではエンジンの回転数はスロットルによらず通常一定に保たれていて、その代わりにエンジン音をそれらしく発生させてごまかして(?)います。ためしにエンジン回転数のゲージを見ながらスロットルを絞っていっててみてください、回転数はスロットルの操作に関係なく、ほぼ最大回転数となっていますが、エンジン音のほうはスロットルの操作に対応して "回転数が低くなったような" 音を発しているのがわかるはずです。なかなかうまいトリックです。

以上の理由から、標準機体の *.air ファイルを利用してエンジンの出力を小さくするときには、セクション 505 の Maximum horsepower を変更する必要がありますが、上記のとおり、エンジン音の整合を取るためにセクション 500 の Maximum horsepower 項目を同じ値に設定する必要があります。そうしないといつもアイドリング時の音しかしなくなってしまいます。

Section 505 CFS Engine Parameters

CFS では FS98 に比べてとても洗練されたエンジンのモデリング方法が採用されていて、出力をリアルタイムで算出しています。そのためのパラメータがこのセクション 505 で設定されています。

CFSではエンジン出力を計算する際に、まず流入する空気の量を計算しているようです。エンジンをポンプだと考えてみてください。つまりより多く空気を取り込めるほど、出力が大きくなるということです。

空気の流入量、すなわち出力計算のために使用されている変数は以下の 17 項目で、すべてセクション 505 で設定されています。また WW2 で活躍した航空機には過給器が取り付けられており、海面高度から上昇限界高度にわたって吸気圧が一定となるようになっていました。CFS では過給器がモデリングされており、FS98との相違点となっています。過給器に関する設定もセクション505にあります。

パラメータ名 説明

Displacement (Per Cylinder)

1気筒あたりの排気量

Compression Ratio

圧縮比

Number Of Cylinders

気筒数

Maximum RPM

最大回転数

Unknown1 (HP?)

不明なパラメーター

Neg-G Carburetor Cut Out

マイナスGで燃料供給が止まるかどうか

Engine Type

シリンダーの配置(星型=0、直列=1)

Is Turbocharged

過給器の有無

Max. Manifold Pressure

最大吸気圧

Boost Gain

過給器による加圧率

Critical Altitude

過給器が機能を発揮する限界高度

WEP Type

緊急出力のタイプ(なし=0、水メタノール噴射=1、メタノール噴射=2、緊急出力=3)

WEP Manifold Pressure Change Rate

緊急出力による吸気圧の変化率

WEP Manifold Pressure Boost

緊急出力による吸気圧の加圧量

Fuel Injection

燃料噴射式エンジン

Auto Magneto Cutoff

点火装置自動停止の有無

Manual Cutoff Available

手動停止の可否(手動停止可=0、不可=1)

CFSでは以上のようなパラメータを元にして、次のような手順で出力を計算しているようです。

  1. 空気の流入量を元に燃焼した空気の量を計算する。
  2. 燃料/空気混合比率と上記の燃焼した空気の量を元に燃料の燃焼した燃料の量を計算する。
  3. 上記の燃焼した燃料の量を元に出力を計算する。

Section 506 Throttle Effectively Table

このセクションには数値の組み合わせが2対設定されています。以下は CFS 標準の P51Dのデータです。

0

0.2

1

0.98

1番目のペアの0.2を1.0に変更するとスロットルは常にフルスロットル状態になります。2番目のペアの0.98を小さくするとフルスロットルになりません。

セクション 506 は CFS 標準機体のすべての機体でほぼ同じ設定となっています。このセクションに関しては、スロットルの効き具合以外に、飛行特性に大きな影響は及ぼさないようです。

Section 507 Fuel mixture

このセクションはルックアップテーブル形式になっており、燃料消費率、混合気比率、トルク、出力に影響を及ぼします。CFS 標準の P51D のセクション 507 は次のような数値になっています。

0.054 0.0
0.067 1.0
0.124 0.0

その他のCFS標準機体も同じ設定になっているか、ごく近い値です。0.054、0.067、0.124の値を大きく変えてしまうとエンジンがスタートしなくなってしまいます。また、このセクションのフォーマットを変更してしまうと機体データを正常にロードできなくなってしまいます。以下に設定値をを変化させたときの、飛行特性の変化の実例を紹介します。

1.0 を 2.0 に変えた場合

0.054 0.0
0.067 2.0
0.124 0.0

燃料の流入量が 2 倍になり、出力が 2 倍になりますが、エンジンの回転数と吸気圧は変わりませんので空気の流入量は変わりません。この結果、混合気比率はもとの設定の半分になります。元の混合気比率は14:1ですがこの変更により7:1になりました。

0.0を1.0に、1.0を2.0に変えた場合

0.054 1.0
0.067 2.0
0.124 1.0

この場合、高度が上がるにつれて燃料の流入が増加しました。どうやらこのセクションは高度とキャブレターの混合気比率の校正を行っているようです。

Section 508 Carburetor Calibration

このセクションには校正曲線らしきものが定義されており、燃料消費率、混合気比率、トルクおよび出力に影響を及ぼします。以下は CFS 標準の P51D の例です。

0 0.53
700 0.53
2000 0.56
2200 0.56
3000 0.56

ここではセクション 508 を変更したときに、飛行特性がどのように変化するかの実験を行った結果を示します。A/Fは混合気比率です。エンジンに負荷をかけて低回転時のデータを収集するためプロペラピッチは手動とし、その他の条件は以下のようにしました。

吸気圧 61psi
スロットル 100%
混合気比率 100%
高度 1000フィート

実験はマニュアル操作で行われましたので、高度には±100フィート程度の誤差を含みます。また回転数が上がるにつれて、トルクは減少しますのでこれについては一定ではありません。回転数とトルクとの関係についてはセクション509を参照してください。

実験 1

セクション 508 の設定
3000 0.5  
2200 0.5
2000 0.5
700 0.5
実験結果
RPM GPM A/F HP Torque
3000 3.01 13.38 2103 3682
2416 2.38 13.59 1723 3746
1987 2.08 12.82 1403 3779
1800 1.94 12.45 1303 3801

実験2

セクション 508 の設定
3000 0.9  
2200 0.9
2000 0.9
700 0.9
実験結果
RPM GPM A/F HP Torque
3000 5.62 7.12 3925 6879
2781 5.26 7.06 3664 6920
2500 4.82 6.92 3318 6973
2218 4.16 7.12 2951 6988
1958 3.78 6.9 2606 6996

実験3

セクション 508 の設定
3000 0.9  
2200 0.8
2000 0.77
700 0.5
実験結果
RPM GPM A/F HP Torque
3000 5.51 7.72 3946 6916
2700 491 7.4 3447 6685
2508 4.4 7.63 3093 6476
2207 3.79 7.81 2609 6209
200 3.27 8.23 2287 5984
1800 2.62 9.19 1940 5661

以上の結果より、トルクと回転数は、セクション 508 の設定値を係数として、正比例の関係にあることがわかります。セクション 508 の数値を増加すると、燃料の燃焼量が増加して、出力が増大します。

興味深いのは、このセクションの値を0.5に設定すると混合気比率はほぼ13:1で一定となり、0.9に設定した場合には7:1になる点です。どうやらセクション 508 はある回転数における最適な混合気比率を定義しているようです。通常はガソリン 1 ポンドあたり空気 13 ポンドの割合で燃焼していますが、このセクションの変更によってガソリン1ポンドあたり7ポンドで燃焼するようです。

燃焼される空気は、吸気圧、回転数および排気量に基づいた吸気の流入量に比例しているようですが、空気の温度は考慮されていないようです。このセクションはそれを補正するために存在していると思われます。

過給器で加圧された空気は断熱圧縮によって温度が上昇します。逆に、圧力が一定で温度が高くなれば、量は減ります。2次大戦中に活躍した戦闘機のほとんどは、過給器とエンジンの間にインタークーラーが設けられています。インタークーラーにより流入した空気は冷却され、密度が高くなり、結果として空気の流入量が増加します。この動作をシミュレートするためには、単位堆積あたりの空気流入量変化を校正するため、条件に応じたキャブレターの校正曲線が必要になります。セクション 508を "carburetor calibration" と呼んだのはそのためです。

まとめますと、このセクションは、回転数の関数として、燃料消費率とトルクを定義する校正曲線を定義するものです。これから設計しようとしているエンジンの気筒数や排気量によって、独特のトルク特性が必要な場合にはこのセクションを編集してやることで、望む出力特性を実現することができます。

Section 509 Per Cylinder Torque Loss

このセクションには1気筒あたりのトルク損失が定義されています。トルク損失は回転数の関数として定義されていて、エンジンの摩擦をモデル化しています。校正曲線には負の回転数が定義されていて、これはおそらく、出力0の状態で逆回転しているエンジンをモデル化しているものと思われます。

続き:第2章 プロペラに関するセクション